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日本における水質汚染の歴史は古く、遡ると明治時代の「足尾銅山鉱毒事件」に至ります。この事件は銅山から流れ出た鉱毒が原因ですが、突き詰めればこれは自然由来に属します。人為的な水質汚染は高度経済成長時に顕著となります。産業復興や経済発展に伴い、大都市を中心に工業化・都市化が進み、水質汚染は拡大の一途を辿ります。水俣病やイタイイタイ病は歴史の教科書にも載っている既知のことです。これを機に水質保全に関する法律が整えられ、昭和45年には水質汚濁防止法が制定されました。

日本の水質汚染の主な原因は大きく3つに分類されると言われています。

ひとつは「産業排水」です。工場や研究所など事業場から流れ出るものと主とした産業排水です。上記の水俣病やイタイイタイ病もこの産業排水に含まれる有害物質が原因でした。水質汚染が社会問題となってからは、排水処理方法や制度の改善が進み、公害病の患者は減少しつつあります。

ふたつめは「生活排水」です。家庭から日常的に出る排水のことで、台所や風呂、洗濯から出る生活雑排水とし尿の2種類があります。日本での汚水処理の普及率は約90%で、まだ約1割では処理されず河川に放流されていることになります。汚染が進めば生態系が破壊され、やがて私たち人間の健康にも影響を及ぼしかねません。

さいごは「気候変動」ですが、これは近年急増している水温上昇や渇水、豪雨といった気候変動のことで、これも水質汚染の原因と言われています。現時点でも、温暖化などの影響で水温が十分に下がらず、閉鎖性水域である湖沼でのアオコの異常発生や、水中低層の酸素濃度の低下による水質悪化などの報告があります。富栄養化項目と言われる窒素やリンの増加、水温差のよる水循環がおこなわれないことによる低層への酸素供給不足が原因です。

日本の水質汚染は公害病の発生以降、概ね改善傾向にありますが、その背景には様々な水質汚染の対策があります。
昭和45年に制定された水質汚濁防止法は、水質汚濁を防止し、国民の健康と生活環境を保円するために作られた法律です。この法律によって、工場や事業所の排水に対して全国一律の基準が作られ、有害物質や排水量を規制し、健康被害に関する賠償責任も定められました。
また工業地域が集中する場所では、各都道府県がより厳しい上乗せ基準を設けて規制をしています。

生活排水については下水道法を始め、自治体にて下水処理施設や浄化槽の設置などを推し進め対策を積極的におこなっています。
汚濁物質が蓄積しやすい湖沼や内海などの閉鎖性水域では、水質汚濁防止法に加え、地域や湖沼毎に類型を分けて施策、管理をおこなっています。

このように水質汚染は過去に比べれば非常に改善され、日本の水質汚染対策は世界的に見ても進んでいます。しかし水は常に流れているものであり、汚染が1ヶ所でも発生するとそれが果てしなく広がってしまうという性質があります。また昨今では土壌汚染から派生する地下水汚染も問題となっています。「汚れてから対策する」ではなく「汚さないようにする」ことが重要であり、我々ひとりひとりの汚さない意識も大切なことです。

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